腰痛の原因の1つに、知名度が高い腰椎椎間板ヘルニアと酷似する脊髄終糸症候群と呼ばれる疾患があります。腰痛のほかに排尿障害や感覚障害を生じ、悪化すると手術が必要なケースもあるので正しい理解が必要です。
しかし、腰椎椎間板ヘルニアと脊髄終糸症候群の症状は非常によく似ているため、専門的な知識がなければ判別が難しいとされています。そこで本記事では、脊髄終糸症候群の特徴的な症状や原因、そして腰椎椎間板ヘルニアとの違いについてご紹介していきます。2つの疾患について正しく理解でき、悪化を防ぐための行動基準を身に付けられるので、ぜひ読み進めてみてください。
脊髄終糸症候群とは

脊髄終糸症候群(Tight Filum Terminale:TFT)とは、腰痛や下肢の痺れ、頻尿や便秘などの排尿障害を併発する疾患です。20代〜30代に好発、さらに50代以降も症状が出現するといわれています。
日常生活では、以下の自覚症状が出現します。
- トイレの便座に座って前屈した際の腰痛
- 掃除機をかけている際の腰痛
- 1日8回以上の頻尿
脊髄終糸症候群は腰椎椎間板ヘルニアと症状が類似しているため、診断は慎重におこなう必要があります。ただし、腰椎椎間板ヘルニアの画像所見のように明確な異常を発見できるわけではありません。出現している症状と独自の誘発テストをおこない、ほかの病気と正確に鑑別する必要がある腰痛疾患です。
脊髄終糸症候群の症状

脊髄終糸症候群の主な症状は、以下のとおりです。
- 腰痛
- 頻尿
- 便秘・下痢
- 下肢の感覚障害
- 上肢の痺れ
- 下肢筋力の低下
腰痛は立位・座位問わず、前屈した際に出現して姿勢を戻すと軽快します。頻尿に関しては、日中6回以上・夜間2回以上といった計8回以上が基準となるので覚えておきましょう。
なお、脊髄終糸症候群の症状は腰椎椎間板ヘルニアとよく似ているため、2つの疾患の違いを続けてご説明します。
腰椎椎間板へルニアとの違い
脊髄終糸症候群と腰椎椎間板ヘルニアにおける症状の違いは以下のとおりです。
脊髄終糸症候群 | 腰椎椎間板ヘルニア | |
腰痛の条件 | 前屈で出現 | 前屈で出現 長時間の座位保持で増悪 |
腰痛の場所 | 太ももの前後面 両側に出現 | 圧迫している神経に一致した箇所 片側のみ |
感覚障害 | 病変に一致しない感覚障害 両側 上肢の痺れあり | 圧迫している神経に一致した感覚障害 |
筋力低下 | 発症直後はなし 長期化すると太もも以下に出現 両側 | 圧迫されている神経に一致した筋肉の筋力低下 片側のみ |
膀胱直腸障害 | 頻尿 便秘 下痢 | 無し |
なお、脊髄終糸症候群と腰椎椎間板ヘルニアは、同時に発症する可能性もあります。ご自身で判断しようとすると誤って症状が悪化する可能性もあるため、当院の受診をおすすめします。
脊髄終糸症候群の原因

脊髄終糸症候群の原因は、脊髄終糸の緊張にあるといわれています。そもそも脊髄終糸とは、背骨の中を走行している脊髄の末端から出ている糸状の組織です。腰からお尻あたりにかけて位置しており、本来は高い柔軟性があります。
しかし、何らかの原因によって脊髄終糸の柔軟性が低下してしまうと、腰を曲げた際に強い伸張ストレスが生じる疾患です。結果、神経に負担がかかってしまって腰痛や排尿障害を引きおこしてしまいます。
脊髄終糸症候群の診断方法

脊髄終糸症候群(TFT)の診断は、問診とTFT誘発テストによっておこないます。問診は自覚症状の聴取、脊髄終糸症候群の誘発テストは以下の手順で実施します。
- 体幹を最大限前屈する
- 頸部をさらに前屈する
- 腰部と下肢に疼痛出現
- 頸部の後屈で疼痛消失すれば陽性
ちなみに、誘発テスト実施直後に疼痛が出現する場合と数分間ストレスをかけて症状が出現する場合があるので、実施する際には注意が必要です。
なお、レントゲンやMRI検査では腰椎椎間板ヘルニアでみられる椎間板の膨隆など、診断を決定づける所見がありません。しかし、脊柱の側弯やショートカットサイン(脊髄が脊柱の最短距離を走行する)は、脊髄終糸症候群でよくみられるので1つの診断所見となります。
脊髄終糸症候群の治療方法

脊髄終糸症候群の治療方法は、主に保存療法と手術療法に大別されます。まずは保存療法で症状の緩解を図り、改善しなければ手術療法を選択する流れです。
保存療法では、患部への温熱療法やリハビリテーションをおこない、脊髄終糸へのストレス軽減を図ります。また、コルセットの着用や鎮痛剤の服薬も保存療法の1つとして提唱されている方法です。
対して手術療法では、硬くなった脊髄終糸の切除をおこないます。本来、脊髄終糸は必ずしも必要な組織ではないため、盲腸同様に切除しても問題ありません。手術後は誘発テストも陰性となり、症状が消失されるケースも多数報告されています。
脊髄終糸症候群と思ったら┃まとめ

脊髄終糸症候群は、知名度が高い腰椎椎間板ヘルニアと酷似している腰痛疾患です。正しく対処して放置してしまうと、腰痛だけでなく感覚障害や排尿障害を引き起こし、悪化してしまう可能性があります。
本記事でご紹介した内容は、あくまで悪化を防ぐための予備知識です。もし、該当する症状や心当たりがある場合は、当院含め専門医療機関での診察をおすすめします。
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ソース元
腰椎椎間板ヘルニアを合併した脊髄終糸症候群の 1 例
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jejot/31/2/31_214/_pdf
脊髄終糸の過緊張によって発症した腰痛・下肢痛の診断(TFT誘発テストについて)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yotsu/12/1/12_1_120/_pdf/-char/ja












